最近ネットを騒がせている『ラブ上等』。 画面越しに漂う圧倒的な圧と、独特すぎる言語プロセッサーから繰り出されるパンチラインの数々に、腹を抱えながら見入ってしまった人も多いはずだ。
観終わったあとに残る、あの妙な中毒性。 彼女・彼らがしきりに口にする「漢(おとこ)」や「筋を通す」という概念。
「え、漢ってつまり筋トレして腕太ければいいの?」「タトゥー入ってたら漢なの?」というミーハーな疑問を抱いたあなたのために、現代社会に生きる我々一般人が取り入れるべき「上等マインド」を勝手に解読・翻訳してみた。
1. 「漢(おとこ)」=筋肉量でも刺青の数でもない
まず結論から言うと、上等界隈における「漢」とは物理的なスペック(筋肉のデカさや刺青の有無)のことではない。
彼らが求める「漢らしさ」の真理、それは「自分の行動と放った言葉に、どれだけ責任を持てるか」という一点に尽きる。
- 筋肉や見た目: あくまで「俺はこういう生き方をしてます」という記号・アパレルに過ぎない。
- 本質的な「漢」: 自分の欲望に嘘をつかず、選んだ退路を自ら断ち、どんな結末になろうと他人のせいにしない覚悟を持った人間のこと。
要するに、どれだけゴツくて強そうでも、言い訳したり保身に走った瞬間、上等界隈では「漢失格(=ダサい)」の烙印を押されるのだ。
2. 「筋(すじ)が通る」を現代語訳してみた
作中で呪文のように唱えられる「筋を通す」。 これは一般社会で言うところの、「ダブルスタンダード(二重基準)をやめろ」という意味である。
あなたが予想した通り、まさにそれだ。 変な矛盾を抱えず、自分だけが得するようなセコい企み(保身・小細工)をしないこと。
- 筋が通っていない状態: 陰で文句を言っているのに本人前ではニコニコする/自分の非を認めず、論点をすり替えて相手を責める
- 筋が通っている状態: 自分が間違っていたら「悪かった」と一瞬で認める/意見があるなら本人の目の前で正々堂々と吐き出す
自分に都合の良いルールをその場で作る「みみっちい人間」を、彼らは何よりも嫌うのだ。
3. 作中で目立った「みみっちさ」と、現代人の闇
実は私自身、つい最近30歳になって「まさにこのみみっちい陰口と保身の応酬」で、15年続いた大切な友人関係を失うという苦い経験をしたばかりだ。
直接本人の前で「ここが嫌だ」「寂しかった」と言えばいいものを、陰で「あいつが変わったのは結婚したからだ」「〇〇(私)があなたの悪口言ってたよ」とセコい小細工や告げ口を重ねた結果、関係は泥沼化。最終的にはコメダ珈琲でシロノワールを前に「なんだこの茶番は」と全員が冷めて終わってしまった。
当事者になると本当にくだらなくて胃が痛い話なのだが、画面越しに観る『ラブ上等』の面々も、形を変えて全く同じ「みみっちさ」を炸裂させている。 人間、どれだけ大人になっても、どれだけ「上等」を気取っていても、素直になれないと途端にダサい泥舟に乗ってしまうのだなと、画面の前で妙に深いダメージを受けてしまった。
とはいえ、今作を冷静に観察していると、ある面白い構造が見えてくる。
彼らは「面と向かってタイマン張る」という最終決戦に至るまでに、裏で驚くほどネチネチと言い合い、探り合い、みみっちい陰口を叩き合っている。
男女問わず、「いや、お前それ直接本人に言いに行けよ!」と画面に突っ込みたくなるような小競り合いが多発するのだ。どれだけ「上等」を謳っていても、人間である以上、保身や嫉妬、ネチっこい感情からは逃れられない。この「理想の美学(漢)」と「生々しいみみっちさ(人間臭さ)」のギャップこそが、朝井リョウ作品の登場人物のような味わい深さを醸し出している。
4. 現代社会で私たちが取り入れるべき「上等マインド」
SNSで裏アカを作り、会社では空気を読んで根回しをし、失言をしたら「そういうつもりじゃなかった」と保身に走る……そんなスマート(笑)な生き方に慣れきった私たち現代人が、彼らから学ぶべき美学は3つある。
- ① 裏表なく、素直な気持ちで人と接する陰でウジウジ言っている時間は人生の無駄。思っていることがあるなら、適切な形でストレートに伝える。
- ② ポカをやらかしたら、堂々と謝る変な言い訳や小細工(根回し)を挟まず、「すみません!私が100%悪かったです!」と頭を下げる潔さこそが、巡り巡って一番カッコいい。
- ③ 自分の選んだ「ダサさ」も引き受けるみみっちい自分を隠すために嘘を重ねるくらいなら、「私はいまセコい感情になっています!」と認めて戦場に立つ。
「上等界隈」の生き方は、一見すると極端で時代錯誤に見えるかもしれない。
けれど、自分の保身ばかり考えて言葉を濁す現代社会において、「素直に認め、堂々と謝り、面に立って話す」という彼らの不器用な誠実さは、一周まわって私たちが一番見失っている「心の筋トレ」なのかもしれない。
とりあえず明日から、会社でミスしたら言い訳せずに「すんません、私が全責任負います(漢)」の顔で生きていこうと思う。


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